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ピルを飲んでも生理痛が変わらないのはなぜ?服用方法や対処法を紹介

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「生理痛がひどくなったのでピルを服用し始めたけど、痛みがあまり変わらない」
「ピルをこのまま飲み続けても大丈夫なの?」

ピルを服用しているのに生理痛が変わらない場合、不安に思っている人もいるのではないでしょうか。

ピルは生理痛の改善に効果が期待できるといわれていますが、タイミングや飲み方、体質によっては十分な効果を実感できない場合があります。

この記事では、ピルを服用しても生理痛が改善しない理由や正しい服用方法、生理痛をやわらげるそのほかの対処法について詳しく解説していきます。

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そもそも生理痛が起きるのはなぜ?

生理になるとお腹や腰が痛くなる「生理痛」は、多くの方が経験する症状のひとつです。

まずは、生理痛がどのようなメカニズムで起きるのかについて見ていきましょう。

生理痛の原因物質「プロスタグランジン」とは

生理痛は、生理の際に子宮内膜で産生される「プロスタグランジン」という成分が大きく関係しています。

プロスタグランジンは、はがれ落ちた子宮内膜を経血として体外に排出する役割があります。

しかし、プロスタグランジンが過剰に分泌されすぎると、子宮の収縮が強くなりすぎたり、血管を収縮させて血流を悪くしたりするため、痛みを引き起こします。

これが、一般的に感じる「生理痛」の正体です。

とくに、生理開始直後の1〜2日は身体の外に排出する経血量が多く、プロスタグランジンの分泌量も増えるため、痛みも強くなりがちです。

月経困難症は機能性と器質性に分類される

日常生活に支障をきたすほどの強い生理痛を「月経困難症」と呼びます。

月経困難症は、子宮や卵巣に明らかな病気がないのに起きる「機能性月経困難症」と、子宮や卵巣に病気があることで起きる「器質性月経困難症」に分類されます。

【機能性月経困難症とは】

特徴

子宮や卵巣に病気がないのに痛みが起きる

主な原因

・プロスタグランジンの過剰分泌

・子宮口が狭い、収縮が強いなど体質面

起こりやすい年代

10代~20代の若年層

【器質性月経困難症とは】

特徴

子宮や卵巣の病気によって痛みが起きる

主な原因

・子宮内膜症
・子宮腺筋症
・子宮筋腫 など

起こりやすい年代

20代後半以降

低用量ピルやLEP製剤は、機能性月経困難症だけでなく、子宮内膜症や子宮腺筋症などを原因とする器質性月経困難症に対しても有効であると考えられています。(OC・LEPガイドライン2020年度版)。

生理痛を引き起こす原因は様々で、中には病気が隠れていることも考えられるため、婦人科を受診し、痛みの原因を把握して治療を行うことが大切です。

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ピルが生理痛に効く仕組みとは

避妊薬としても知られている低用量ピルは、生理痛に対しても効果が期待できるとされています。

ここでは、ピルがどのようにして生理痛を和らげるのか、その仕組みについて解説します。

排卵を抑制し、ホルモンバランスを安定させる

ピルは、卵胞ホルモンと黄体ホルモンという2種類の女性ホルモンが含まれたお薬です。

自然な生理では排卵の前後に体内のホルモン量が大きく変動し、それによって体調不良や生理痛につながることがあります。

対してピルを服用した場合では、ホルモンの変動は小さくなり、生理に伴う不快な症状を抑えることができるとされています。

子宮内膜の増殖を防ぎ、プロスタグランジンの分泌を抑える

ピルにはさらに、子宮内膜が厚くなることを防ぐ効果があります。

子宮内膜が薄く保たれることで、一般的に経血量が減るとされており、それに伴い痛みの原因物質であるプロスタグランジンの産生が抑えられます。

こうした仕組みで、生理痛が軽くなることが期待できると言われています。

低用量ピルを飲んでも生理痛が変わらないのはなぜ?

低用量ピルは、婦人科で処方されるお薬の一つです。

しかし、なかには低用量ピルを服用してもなかなか生理痛の痛みが改善しないと感じる人もいます。その原因をみてみましょう。

①飲み始めから時間が経っていない

低用量ピルを服用しても生理痛の強さが変わらないのは、飲み始めてからまだあまり時間が経っていないからという可能性があるでしょう。

生理痛の改善効果は、実感するまでに1~3シートほどかかることがあります。

低用量ピルを服用すると、体内から分泌される女性ホルモン量が変化しますが、飲み始めのタイミングでは、お薬に身体が慣れるまで、ホルモン量を調整する期間になります。そのため、効果がまだあらわれない人もいるのです。

1〜3シートほど服用を続けると、ホルモンバランスが整い、身体もお薬にあわせて変化するため、効果を感じられるようになる場合が多いです。

※服用開始から1〜3シートの間でも、副作用が強い場合は医師にご相談ください。

②毎日適切な服用ができていない

低用量ピルは、1日1錠を毎日決まった時間に服用するのが基本的な飲み方です。

低用量ピルを頻繁に飲み忘れたり服用する時間に大きなバラツキがあったりすると十分な効果が出ない可能性があります。

③服用している低用量ピルとの相性が悪い

低用量ピルは10種類以上あります。基本的に、卵胞ホルモンと黄体ホルモンという2種類の女性ホルモンが配合されていますが、お薬によって卵胞ホルモンの配合量や黄体ホルモンの種類が異なります。

お薬の種類を変えることで低用量ピルの効果を感じることもあるので、生理痛が良くならないと感じる場合は、医師に相談してみましょう。

④低用量ピル服用初期のマイナートラブル

低用量ピルの服用開始から1~3シート目までは、マイナートラブルとして生理痛のような下腹部痛、生理痛が生じることがあります。

低用量ピルの副作用の中には月経過多(経血量が多い状態)の報告もあり、経血量が多くなったことで痛みがかえって強く出てしまうことがあるのです。

頻度としては高くありませんが、低用量ピルを服用する前よりも明らかに経血量が増えた場合は、副作用の影響も考えたほうがよいでしょう。

⑤病気の可能性

子宮になんらかの病気がある場合、経血量が増えて生理痛がひどくなることがあります。

強い生理痛を伴いやすい病気としてよく知られているのが、子宮筋腫や子宮内膜症などです。

子宮筋腫は子宮の平滑筋に良性腫瘍ができる病気、子宮内膜症は子宮以外の場所で子宮内膜やそれに似た組織が発生する病気として知られています。

子宮筋腫や子宮内膜症でも低用量ピルが治療に使われることがあるため、もし低用量ピルを服用しても生理痛の症状が変わらない場合は、お薬との相性が悪い可能性やその他の病気がある可能性も考えましょう。

低用量ピルを飲んでも生理痛が変わらない場合の対処法

低用量ピルは、婦人科で処方されるお薬の一つです。しかし、なかには低用量ピルを服用してもなかなか生理痛の痛みが改善しないと感じる人もいます。その原因をみてみましょう。

飲み始め時期の場合:3シートほど継続して服用してみる

低用量ピルを服用しても生理痛が変わらない場合、対処をすることで効果に変化が出る場合があります。

ここでは、服用しているシートの日数別に対処法をみていきましょう。

4シート目以降の場合:医師への相談がおすすめ

服用している低用量ピルが1~3シート目の場合、まず3シートほどは継続して服用してみます。

3シート目を飲み終わっても生理痛が変わらない場合は医師に相談しましょう。

しかし、人によっては副作用がつらくて低用量ピルの服用を続けるのが難しいと感じるケースもあるかもしれません。

その場合は医師に相談してほかの治療法を提案してもらったり、低用量ピルの種類を変えてもらったりすることもできます。

なお、低用量ピルでみられやすい吐き気や不正出血などの副作用は、1~3シートほど服用することで症状が軽減されていくといわれています。

そのため、副作用を感じる場合も、3シートほど飲み続けることをおすすめされることもあります。

漢方薬や鎮痛薬を使用する選択肢も

生理痛をやわらげる方法には、漢方薬や鎮痛薬の服用もあります。

鎮痛薬のうちNSAIDsと呼ばれるものは、プロスタグランジンの生成を抑えることで痛みをやわらげるお薬です。

子宮内膜から分泌されるプロスタグランジンの影響によって子宮が過度に収縮することが原因で起こっている生理痛の場合、鎮痛薬を服用すると、プロスタグランジンの影響を少なくできるので痛みをやわらげることが可能です。

漢方薬においては、桃核承気湯(とうかくじょうきとう)や桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)、当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)などが生理痛に効果を発揮するといわれています。

鎮痛剤も漢方もピルと併用できるものがあります。いずれも医師の指示のもと使用しましょう。

変わらない生理痛は我慢せず医師へ相談を

低用量ピルを4シート以上服用しているにもかかわらず生理痛が変わらない場合は、お薬との相性が合わないか、病気が隠れている可能性があります。

病気が原因の場合は、適切な治療を受けることがまずは大切です。

低用量ピルを服用しても生理痛が変わらないことを医師に相談し、何か病気が隠れていないか検査をしてもらいましょう。

よくある質問

ピルは生理痛に効果がありますか?

ピルの服用により、生理痛を和らげる効果が期待できるとされています。

ピルは排卵を抑え、子宮内膜が厚くなりすぎるのを防ぐことで、経血量を減少させます。

それに伴って、生理痛の主な原因であるプロスタグランジンの分泌が抑えられ、子宮の収縮が穏やかになり、痛みの軽減が期待できると言われています。

生理痛に効果があるピルの種類は?

生理痛の軽減に対しては、主に以下のお薬が使用されます。

  • 低用量ピル
    高い避妊効果をもち、副効用として生理痛やPMSの改善も期待できると言われている
  • 超低用量ピル
    低用量ピルよりもエストロゲンの含有量が少なく、月経困難症や子宮内膜症の治療目的で使用されている

どの種類のピルがあっているのかは、個人の症状や体質によっても異なります。詳しくは、ピル処方を行っている医療機関でご相談ください。

関連:ピルとは?どの種類を飲めばいいの?知っておきたいピルの基礎知識

ピルを飲んでも生理痛がひどいのはなぜですか?

ピルを飲んでいるのに生理痛がひどい・変わらない場合は、以下のような原因が考えられます。

  • 飲み始めから時間が経っていない
  • 毎日適切な服用ができていない
  • 服用している低用量ピルとの相性が悪い
  • 病気の可能性

低用量ピルの服用開始直後は効果が感じにくい場合もあるかもしれませんが、通常は3シートほど服用を続けるとホルモンバランスが整い、症状が落ち着いて効果を感じられる方が多いと言われています。

正しく服用を続けているにもかかわらず生理痛が変わらない場合は、ピルの種類を変更したり、他の治療が必要になることもあります。詳しくはピルの処方を受けた医師にご相談ください。

生理痛があるときに、ピルと鎮痛薬を併用してもいいですか?

基本的には、ピルと市販の痛み止めの併用は可能です。

ただし、「アセトアミノフェン」などは低用量ピルと相性が良くないことが知られているため、上記の成分を含まない痛み止めを選ぶと安心です。(参照:バイエル薬品株式会社 トリキュラー錠28添付文書 2020年6月改訂(第1版)

ピルを服用中で痛み止めを使用したい場合は、念のため処方を受けた医師にご相談ください。

ピルとの飲み合わせで注意が必要なお薬については、以下の記事でも解説しています。

参考文献

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