「生理前の眠気がひどい」
「夜にしっかり寝ていたはずなのに日中も眠い」
といったお悩みはありませんか?
生理前の異常な眠気には、PMS(月経前症候群)が関係しているかもしれません。
今回は、そんな生理前の眠気の原因や、その対処法について説明します。生理前の眠気にお悩みの方は、ぜひご一読ください。

生理前に眠気が起こる原因とは
生理前の眠気は、女性ホルモンの変動が影響しているのではないかと考えられています。
女性の身体では生理周期に伴って女性ホルモンが変動しており、排卵後から生理が始まるまでの期間(黄体期)に入ると、黄体ホルモン(プロゲステロン)の分泌量が増加します。

このとき、黄体ホルモンが体内で分解されて「アロプレグナノロン」という物質になり、これが脳内で抗不安作用や鎮静作用を示し、眠気に関与する可能性が示唆されています。
また、黄体期は黄体ホルモンの働きによって、基礎体温が少しだけ上がります。

通常は睡眠に入るとき、深部体温(内臓などの身体の内側の体温)が徐々に下がることで全身が休息状態に入ります。
しかし、生理前の黄体期は体温がいつもより上がるため、眠りが浅くなり日中の眠気やだるさにつながることがあります。
PMSと生理前の眠気との関係性
PMS(月経前症候群)とは、生理前3~10日間の時期に現れる様々な身体的・精神的症状のことです。
普段よりイライラしたり落ち込んだり、不眠や過眠などの睡眠への影響が出ることもあります。
生理前の症状がつらいと感じる方は、無理せず婦人科を受診しましょう。
婦人科では、必要に応じて、生活指導、低用量ピルや症状に合わせたお薬による治療が行われます。
生理前に眠い・眠気がひどいときの一般的なセルフケア
日常生活の中でPMS症状の改善が期待できる対策があります。
いくつかご紹介しますので、日々の生活の中でできることから取り組んでみましょう。
睡眠環境の改善
何かと忙しい現代の生活では、十分な休息が取れていない可能性があります。まずは睡眠環境の改善を意識してみましょう。
一般的に、理想の睡眠時間は6~9時間程度といわれています。自分にとって最適な睡眠時間の確保に加えて、規則正しい睡眠リズムを整えることが重要です。
起床時間や入眠時間を揃えるように意識することで、日々の生活の中で自然と眠りやすいリズムが生まれます。寝つきが悪い方は、リラックスする香りのアロマオイルなどを使ってみるのもおすすめです。
タバコ・コーヒー・お酒などの刺激物はなるべく控える
タバコやコーヒーなどの嗜好品は、生理前にはおすすめできません。
カフェインやニコチンには覚醒作用があるため、摂取することで睡眠に影響を及ぼす可能性があります。
また、お酒の飲みすぎも要注意です。
生理前は、女性ホルモンの影響でいつもに比べるとアルコールが分解されにくくなるため、酔いやすくなります。アルコール摂取はPMSのリスクを高めるといった報告もあるため、なるべく控えるようにしましょう。
甘いものの食べ過ぎに注意
生理前は甘いスイーツが食べたくなるかもしれませんが、食べ過ぎると急激な血糖値の上昇を招きます。
血糖値が急に上がったり下がったりすると、イライラや眠気、過食につながります。甘いスイーツは適度な量で止めるようにしましょう。
ぬるま湯や蒸しタオルでリラックスを
ストレスはPMS症状を悪化させることがあります。
社会生活や学校生活の中でストレスをゼロにすることは難しいですが、避けられるストレスは避け、リラックスする時間を確保するようにしましょう。
ぬるま湯に浸かったり、蒸しタオルを首元などに当てて温めると、副交感神経が活発になり、リラックス効果が期待できます。
自分なりのリラックス方法を見つけてみましょう。
ストレッチや適度な運動をおこなう
定期的な運動習慣は、PMSの対処法のひとつでもあります。
普段、全く運動習慣がない方にとってはハードルが高いかもしれませんが、日常生活の中でできるだけ階段を使う、歩く時間を増やしてみるなど、少しでよいので意識することから始めましょう。
軽いストレッチやウォーキングなどを行うと、ストレス発散にも効果的です。
PMS症状に対する治療薬
ここでは、PMS症状に対して一般的に検討されるお薬をご紹介します。
※具体的な治療方針や処方については、医師・薬剤師の指示に従ってください。
低用量ピルの服用
低用量ピルは、卵胞ホルモンと黄体ホルモンという2種類の女性ホルモンが配合されたお薬です。
PMSの原因は明らかになっていませんが、生理周期に伴って女性ホルモンが変動することが関係していると言われています。
低用量ピルは排卵を抑制し、女性ホルモンの変動を穏やかにする作用があり、PMS症状の改善にも効果が期待できるとされています。
漢方薬を用いた治療
古くから、女性特有の不調に対して漢方薬が用いられてきました。
一般的にPMSに対して、以下のような漢方薬が検討されます。
- 当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
- 桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
- 加味逍遙散(かみしょうようさん)
- 抑肝散(よくかんさん)
- 抑肝散加陳皮半夏(よくかんさんかちんぴはんげ)
漢方薬は体質に合ったものを選ぶことが重要です。医師と相談しながら、自分の体質に合った漢方薬を見つけていきましょう。
市販薬を用いたセルフメディケーション
PMSに対して効果が期待できるお薬は、市販されているものもあります。
西洋ハーブのチェストベリーはPMSの症状を改善する効果があると確認されており、医薬品として販売されています。
ただし、チェストベリーは女性ホルモンに影響することが知られているため、低用量ピルとの併用はおすすめできません。
低用量ピルに限らず他にお薬を服用している方は、飲み合わせに問題がないか、医師や薬剤師に必ず服用前に相談するようにしましょう。
PMSの症状でお悩みの人はスマルナに相談しよう
PMSで悩まされる女性は多く、生理がある女性のうち約70~80%は生理前に何らかの不調を抱えているといわれています。
眠気をはじめとする、毎月悩まされるPMSは病気のひとつであり、さまざまな治療法があります。PMS症状で日常生活に支障をきたしているようなら、婦人科を受診して医師に相談してみましょう。
眠気が気になるだけで受診なんて…と受診に対してハードルが高いと感じる方は、ぜひ「スマルナ」のサービスをご活用ください。

スマルナでは、助産師・薬剤師が365日、ピル・PMS・生理・避妊などのお悩みを無料で相談することができます。
※スマルナ医療相談室のご利用にはスマルナアプリが必要です
スマルナアプリからチャットで簡単にメッセージが送れますので、気になる症状がある場合や、病院を受診したほうがいいか悩んでいる場合など、ぜひお気軽にご相談ください。
参考文献・資料
- 「月経前症候群(PMS)」MSDマニュアルプロフェッショナル版
- 「月経前症候群・月経前不快気分障害に対する診断・治療方針」日本産婦人科学会 ジョセイヘルスケア委員会
- 「産婦人科診療ガイドライン ―婦人科外来編2023」日本産科婦人科学会/日本産婦人科医会
- 「OC・LEPガイドライン 2020年度版」日本産科婦人科学会/日本女性医学学会
- 「精神科からみた PMS/PMDD の病態と治療」 大坪天平,女性心身医学,2017.22.3.
- 「ストレスと睡眠・情動障害:神経ステロイド・アロプレグナノロン系の関与」松本欣三/Alessandro Guidotti / Erminio Costa,日本薬理学雑誌,2005.126.2.
- 「女性の睡眠障害」e-ヘルスネット,厚生労働省
