血液が凝固機能によって固まった、血液の塊のことを「凝血塊(ぎょうけっかい)」やコアグラと呼ぶことがあります。
そのため、生理中にみられる血の塊もまたこの凝血塊やコアグラといえます。
剥がれた子宮の内膜などの組織や分泌物を含んでいるのが特徴です。
凝血塊の色は鮮やか、または黒みかかった赤色の場合が多く、組織片や液体が混ざっていることも特徴です。
大きな血の塊が頻繁に出たり、経血量が異常に多かったりする場合は、一例として以下の病気の存在が疑われることもあります。
- 子宮筋腫
- 子宮内膜ポリープ
- 子宮内膜症
- 子宮腺筋症
最後まで読んでいただければ、生理中に出る血の塊の原因が分かり、不安がある場合に婦人科を受診できるようになるでしょう。
生理中に出る血の塊は凝血塊!排出される原因は?
通常、子宮内膜が剥がれ落ちる際に出る経血は、タンパク質分解酵素であるプラスミンの働きにより、サラサラの状態で排出されます。
しかし、経血量が増加したり、プラスミンの分解が追いつかなくなったりすると、フィブリンという凝固物質が残り、血の塊として排出されることがあります。この現象自体は、一時的に発生する場合であれば大きな問題ではありません。
ただし、レバー状の大きな塊が頻繁に出る、または経血量が異常に多い場合は、「過多月経」の可能性があります。過多月経は、子宮筋腫や子宮腺筋症、ホルモンバランスや血液凝固機能の乱れなどの原因も考えられるため、注意が必要です。
生理中の血の塊に不安を感じたら、放置せず婦人科を受診することをおすすめします。
生理中に血の塊が出た場合に疑われる4つの病気
凝血塊が出た場合に疑われる病気は以下ようなものが挙げられます。
- 子宮筋腫
- 子宮内膜ポリープ
- 子宮内膜症
- 子宮腺筋症
- 女性ホルモン異常
- 甲状腺ホルモン異常
- 血液疾患
生理中に血の塊が頻繁に出る場合におもに考えられる原因は、婦人科系の病気です。経血量の増加や強い月経痛を引き起こし、日常生活に支障をきたすことがあります。
ここでは、これらの病気について解説します。最後まで見れば、生理中に血の塊がみられたときに注意すべき病気の特徴が分かり、いち早く体調の変化に気づけるようになるでしょう。
子宮筋腫
子宮筋腫は、子宮の壁(子宮筋層)に発生する良性の腫瘍です。30歳以上の女性の2〜3割に見られ、女性ホルモンの影響で大きくなるとされています。
発生する場所によって「粘膜下筋腫」「筋層内筋腫」「漿膜下筋腫」に分類され、症状の出方が異なることが特徴です。
子宮筋腫の主な症状は過多月経や過長月経などの生理の異常やそれに伴う貧血、下腹部痛などです。
血の塊が頻繁に出る、経血量が多い、生理痛が強いなどの症状が続く場合は、子宮筋腫が隠れていることもあるため、早めに婦人科を受診するようにしましょう。
子宮内膜ポリープ
子宮内膜ポリープは、子宮内膜の細胞が過剰に増殖し、子宮の内腔に突き出る腫瘍です。過多月経や過長月経を引き起こし、生理中に血の塊が出る原因になることがあります。
経血の異常な増加が続くと、貧血のリスクも高まるため注意が必要です。
また、不妊の要因が子宮内膜ポリープ以外に見当たらず、受精卵の着床を妨げている場合には、産婦人科で子宮鏡手術等で内ポリープを切除することがあります。
子宮内膜症
子宮内膜症は、子宮内膜組織が本来あるべき子宮の内側以外、子宮外で発生してしまう疾患です。とくに20代〜40代の女性に発症するケースが多く見られます。
子宮内膜症の主な症状は、生理痛を含むさまざまな痛みと不妊です。生理痛の他、排便痛や性交痛が現れることがあります。
また、不正出血や月経過多などがみられることもあるため、血の塊が排出される可能性があります。
子宮腺筋症
子宮腺筋症は、子宮内膜と似た組織が子宮の筋肉層に発生・発育する病気です。子宮が肥大し、強い生理痛や過多月経が引き起こされることがあります。
子宮腺筋症の主な症状は、生理痛や性交痛、月経過多やそれにともなう貧血などです。また、流産や早産など妊娠時のトラブルにつながる場合もあるため、早期の診察と治療が重要です。
生理中に血の塊が出たら病院に行くべき?受診が推奨される症状とタイミング
生理中に血の塊が出ること自体は、正常な範囲で起こる場合もあります。しかし、以下の症状・状態が続く場合は、病気の可能性が疑われるため、早めに婦人科を受診することをおすすめします。
- ナプキン交換時に何度もレバー状の塊が見られる
- 1時間ごとにナプキンを交換しなければいけないほどの出血がある
- 夜用ナプキンでも追いつかないほどの出血がある
- 8日以上、生理の出血が続く
- 以前よりも生理痛がひどくなり、鎮痛剤が効かないことがある
- めまい、立ちくらみ、息切れ、倦怠感が日常的にある
- 生理になるとめまい、立ちくらみ、息切れや動機などの貧血症状がみられる
血の塊が1〜2回程度しかみられない場合でも、日常生活に支障が出るほどの症状があるなら、すぐに受診してください。また、生理のたびに症状が悪化している場合も同様に、婦人科での診断が必要です。
放置すると、隠れた病気を見逃してしまい、貧血などの症状が悪化するほか、不妊や妊娠時のトラブルにつながる可能性もあります。
生理の異常は、体からの重要なサインです。早期に診察を受けることで、症状の改善につながります。
血の塊や経血量の変化に不安を感じる場合は、医師と相談することを迷わず選びましょう。
生理中に血の塊が多く出る「過多月経」の3つの治療法
過多月経の治療法の一例を紹介します。
- 低用量ピル
- 子宮内黄体ホルモン放出システム(ミレーナ)
- 外科療法
生理中に血の塊が多く出る場合は過多月経の可能性があり、日常生活に支障をきたすことも少なくありません。過多月経を放置すると、貧血や病気の見逃し・悪化につながるリスクもあります。
ここでは、過多月経の症状を改善するための代表的な治療法について詳しく解説します。最後まで見れば、過多月経の治療法が分かり、自分に合った手段を検討できるようになるでしょう。
低用量ピル
低用量ピルは、過多月経の治療に効果的な選択肢の一つです。エストロゲンとプロゲステロンという2種類の女性ホルモンを含んでおり、服用することでホルモンバランスを調整します。
排卵を抑制し子宮内膜が厚くなるのを防ぐため、経血量が減少し、生理中の血の塊が減ることが期待できます。
低用量ピルは過多月経の改善だけでなく、生理痛の緩和や月経不順の改善にも役立つことも特徴です。また、服用を続けることで、月経前症候群(PMS)の症状を軽減する効果も期待できるとされています。
ただし、喫煙や年齢、BMIによってピルの副作用の一つでもある血栓症などリスクが高まる可能性もあるため、処方を受ける時には、医師とよく相談することが大切です。
子宮内黄体ホルモン放出システム(ミレーナ)
子宮内黄体ホルモン放出システム(ミレーナ)は、T字型の小さな医療器具です。子宮内に挿入し、持続的に黄体ホルモンを放出することで避妊効果を発揮します。
過多月経や月経困難症の治療にも有効とされており、生理痛や生理の量の軽減が期待できます。効果は約最長5年間持続し、低用量ピルの服用が難しい方にも適した選択肢です。
ただし、挿入時に痛みを伴う他、まれに不正出血や腹痛などの副作用が生じる可能性があります。ミレーナの適用は医師の診察に基づき決定されるため、導入を検討する際は婦人科に相談することが重要です。
外科療法
過多月経の診察で子宮筋腫や子宮腺筋症などが確認され、医師が必要と判断した場合には、外科的な治療が選択される場合もあります。一般的な治療法は以下の通りです。
- 子宮を取る手術(子宮全摘術)
- 筋腫だけ取る手術(筋腫核出術)
- 子宮腺筋症の病変部分だけ取る手術(腺筋症摘出術)
- 子宮へ栄養を運ぶ血管をつめる治療法(子宮動脈塞栓術)
- マイクロ波で子宮内膜を壊す治療法(子宮内膜焼灼術)
外科療法は、入院や術後の回復期間が必要になる場合があります。医師としっかり相談し、生活スタイルや将来の計画に合った治療法を選択することが大切です。
生理の血の塊に関する3つのよくある質問
生理の血の塊に関するよくある質問は以下の3つが挙げられます。
- 更年期に生理で血の塊が出る原因は?
- 生理中に出るプルプルした血の塊は病気のサイン?
- 生理中に血の塊が出て妊娠していたケースはある?
ここでは、生理の血の塊に関連する質問と回答を紹介します。最後まで見れば、生理の血の塊に関しての疑問が解消され、女性の身体をより理解できるようになるでしょう。
更年期に生理で血の塊が出る原因は?
更年期に生理で血の塊が出る原因は、ホルモンバランスの変化が一因として考えられます。
また、子宮筋腫や子宮腺筋症などの婦人科系の病気が隠れている場合やホルモン分泌に関係している甲状腺や脳などに病気が隠れている場合も経血が通常より多くなり、レバーのような血の塊が排出されることがあります。
そのため、大量の経血や頻繁に出る大きな血の塊、ひどい下腹部痛などが続く場合は、婦人科を受診するようにしましょう。
生理中に出るプルプルした血の塊は病気のサイン?
生理中に出るプルプルとしたゼリー状の血の塊は、剥がれ落ちた子宮内膜や経血が固まったものであり、少量であれば問題はありません。
しかし、頻繁に出る、サイズが大きい、または他の症状を伴う場合は、過多月経であり、婦人科の病気が隠れている可能性があります。
生理中の血の塊が気になる場合、出血量を注意して観察し、いつもと違うと感じたら医師に相談しましょう。
生理中に血の塊が出て妊娠していたケースはある?
生理中に血の塊が出た場合、妊娠のサインであるとは限りません。
ただし、妊娠中に出血が起こり、血の塊として見られるケースもあります。代表的な病気は、絨毛膜下血腫や子宮外妊娠です。
不安な場合は、妊娠検査薬で確認する、または婦人科で正確な診断を受けることをおすすめします。
まとめ
生理中の血の塊は、正常な範囲内で見られる場合もあれば、過多月経や子宮の病気などが原因となっている場合もあります。
大量の経血や頻繁に出る大きな血の塊、強い生理痛などの症状が続く場合は、婦人科を受診し、正確な診断を受けることが重要です。
生理の際に異常を感じたら、早期の相談で不安を解消し、健康を守りましょう。
なお、「産婦人科や婦人科を受診するのには抵抗がある」「受診する時間がない」という方は、まず「スマルナ」にご相談ください。
スマルナなら、オンラインで365日いつでも生理に関する相談ができます。また、医師の診察・ピルの処方もオンラインで受けられます。
ピルの処方が確定後、ご指定の住所までお薬をお届けする際には、中身が分からないようにプライバシーに配慮された梱包で郵送されます。相談は無料ですので生理の血の塊に関して気になっている方は、お気軽にご相談ください。
参考資料
抗血栓療法中の区域麻酔・神経ブロックガイドライン-公益社団法人 日本産科婦人科学会
(1)Polyps:子宮頸管ポリープ,子宮内膜ポリープ-公益社団法人 日本産婦人科医会
ピルはどうやって働くの? ◎ 避妊だけじゃない-公益社団法人 日本産科婦人科学会
低用量エストロゲン・プロゲストーゲン配合剤 ガイドライン(案)-公益社団法人 日本産科婦人科学会