生理以外の出血を不正出血といい、その中のひとつが排卵出血です。
排卵出血は病気ではないため、治療の必要はありません。
しかし、出血を繰り返したり、出血量が多かったりする場合は病気の可能性もあるため、婦人科の受診が必要です。
今回は、不正出血の種類や、排卵出血の原因や特徴などを分かりやすく解説します。
排卵出血とは
排卵出血とは、排卵時に起こる出血のことです。
排卵出血は、卵胞ホルモン(エストロゲン)の一時的な減少により、子宮内膜の一部が剥がれることで起こるとされています。
女性の生理には、エストロゲンとプロゲステロンという2つの女性ホルモンが影響しています。
生理が起こるのとほぼ同時期に、脳から分泌されたホルモンが刺激となって、卵巣の中でいくつかの卵胞が成長を開始します。成長を始めた卵胞のうち1つのみが発育を続け、成熟卵胞となり、成熟卵胞からエストロゲンが分泌されます。
成熟卵胞から卵子が飛び出すのが排卵です。
卵子が飛び出した後、卵胞は黄体という組織に変化し、プロゲステロンを分泌します。
妊娠が成立しなかった場合、エストロゲンとプロゲステロンの分泌は低下して、生理が起こります。
なお、排卵出血と不正出血の違いについては以下の記事で詳しく解説しているため、参考にしてください。
排卵出血が起こる原因・理由
排卵出血の原因として、排卵直前に卵胞ホルモン(エストロゲン)が一時的に減少し、子宮内膜が一部剥がれ出血することが考えられます。
基本的には、生理周期の中で生じることであり、病気ではなく、治療も不要です。ただし、出血が長引く、量が多い、痛みが強いなど、日常生活へ影響する場合は病院へ相談することを推奨します。
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排卵出血と思われる場合でも受診が必要なケースは?注意すべき5つの病気・症状
排卵出血と思われる場合でも受診が必要なケースとして注意すべき5つの病気・症状は以下の5つが挙げられます。
- 生理不順
- 子宮筋腫
- 子宮頸がん
- 子宮内膜症
- 子宮頸部異形成
排卵日あたりに出血したとしても、排卵出血ではなく別の病気が潜んでいる場合もあります。不正出血は出血量が少ないからといって、病気が進行していないというわけではありません。
これから紹介する5つの病気や症状には、特に注意してください。
生理不順
生理不順とは、生理周期の乱れがあることです。生理周期は25〜38日周期が正常とされ、25日より短い周期で起こるものを頻発月経、39日以上の周期を稀発月経、これまで来ていた生理が3か月以上ないものを続発性無月経と呼びます。
初潮を迎えたばかりの頃は、ホルモンバランスが不安定なため生理周期が乱れやすいことが知られています。もし初潮から数年経っても生理不順のある方は、医師へ相談してみましょう。
子宮筋腫
子宮筋腫とは子宮内にできる良性腫瘍のことで、痛みや不正出血、便秘や頻尿などの症状がみられます。
子宮筋腫は45歳までに、約10人に7人の女性が発症する病気です。
子宮筋腫の症状がみられる場合には、早めに医師へ相談しましょう。
子宮頸がん
子宮頸がんは子宮から腟につながる子宮頸部に発生するがんです。
初期症状として不正出血がありますが、無症状や、少量の不正出血のみなど症状がわかりにくい病気です。子宮頸がんによる少量の出血と、排卵出血を見分けるのは難しく、医師の診察が必要です。
現在ではワクチン接種と定期検診で「がん」になることが予防できる時代です。年齢に応じたがん検診を受けましょう
子宮内膜症
子宮内膜症とは、本来は子宮内膜にしか存在しない子宮内膜組織(=生理を起こすところ)が、子宮以外に出現する病気のことです。
無症状の場合もありますが、排卵出血のような不正出血がみられることもあります。
子宮内膜症は不妊の原因にもなりやすく、妊娠を希望されている方は早めの受診をおすすめします。
子宮頸部異形成
子宮頸部異形成は、子宮頸がんの前段階の病気です。
初期症状はほとんどみられず、ごく稀に不正出血がみられるため、排卵出血と勘違いされる方もいます。子宮頸部異形成は20〜30代女性に増加傾向であり、子宮頸がん検診で発見されることも珍しくありません。
子宮頸がん検診は必ず受けるようにしておきましょう。
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排卵出血以外にみられる不正出血の種類
排卵出血以外にも、不正出血には以下のような種類が挙げられます。
- 無排卵出血
- 着床出血
- 腟炎
- 更年期による出血
- 腟・外陰部の出血
不正出血は身体の状態を判断するサインのひとつのため、正しい知識が必要です。排卵出血は一時的なもので病気ではありませんが、排卵出血以外の不正出血があった場合には病気の可能性があります。
なお、排卵出血以外の不正出血の詳細は以下記事で解説しているため、併せてご確認ください。
無排卵性出血
無排卵性出血とは、出血はあっても、排卵がないことを指します。
基礎体温測定をしていると、生理後は低温期になり、排卵が起こると高温期に入ります。しかし、無排卵性出血の場合は、低温期が続き、基礎体温に差がないことがほとんどです。
無排卵性出血の状態を放置すると不妊につながる可能性があるため、妊娠を検討している方は早めに受診が必要です。
着床出血
着床出血は、受精卵が着床する際に生じる少量の出血を指します。
「生理だと思ったら、妊娠していた」という声を聞くことも多いのではないでしょうか。着床出血は生理予定日前後のことが多く、妊娠したすべての方に起こるわけではありません。
出血の量や色などの様子から着床出血か、生理か、不正出血かを判断することは難しいとされています。妊娠の可能性がある場合は妊娠検査薬で確認を行いましょう。
腟炎
腟炎は、腟内の常在菌のバランスが崩れることや、カンジダ菌、トリコモナスなどへの感染によりおこる病気です。
腟炎になると痒みや痛み、不正出血などの症状があります。
また、おりものは少量になる、非常に多くなるなど量に変化がみられたり、原因菌によって色や様子が普段と変わることがあります。
病状に応じた投薬での治療となるため、早めに医師へ相談してください。
更年期による出血
更年期とは、閉経時期の前後数年間のことです。
更年期は女性ホルモンが大きく低下することにより、生理期間が長引く、出血量が増えたり減ったりする、気分の波があるなど、身体と心の変化が大きいです。
出血量が多いと貧血になり、疲れやすく、治療が必要な場合もあります。
飲み薬や皮下注射などや皮下注射など様々な治療法があるため、年齢によるものだからと諦めず、まずは医師へ相談することをおすすめします。
腟・外陰部の傷
腟や外陰部のに傷から出血していても痛みなどがない場合、排卵出血と勘違いされることもあります。
腟や外陰部の傷は、小さくすぐに止血できれば問題はありませんが、血がとまらない場合などは早めに受診が必要です。
また、摩擦が起きやすい部位でもあるため再出血や、傷からの感染にも注意しましょう。
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排卵出血などの不正出血が見られた場合の検査内容
不正出血の検査には「どんな検査があるのかな?」と受診の経験がない方は、不安もあるのではないでしょうか。
不正出血が見られた場合、疑われる病気によって検査の内容は様々ですが、婦人科で行われる検査の一部を紹介します。
- 血液検査
- おりもの検査
- 子宮がん検査
- 超音波検査
血液検査などは、ほとんどの方が経験していますが、婦人科ならではの検査もあります。それぞれの検査について解説します。
なお、詳細は以下の記事で解説しているため、参考にしてください。
血液検査
一般的な病気の時と同様に、不正出血がある場合にも血液検査が行われることがあります。
この血液検査は、ホルモンの異常がないか、不正出血による貧血がないかなどを確認するために行われることが多いです。
大きな病院であれば血液検査の結果はすぐに分かりますが、クリニックなどは外部へ依頼するため、結果が出るまで数日かかることもあります。
おりもの検査
おりもの検査とは専用の綿棒を使って腟内のおりものを取り、顕微鏡で観察し培養し菌を特定する方法です。
内診台に座ることに抵抗がある方も多いですが、感染などを調べるためにも重要な検査になります。痛みはなく、すぐに終わるので安心してください。
子宮がん検査
子宮がんは、子宮体がんと子宮頸がんの2つに分けられます。
子宮体がんは子宮内膜、子宮頸がんは子宮頸部の細胞を採取します。子宮内から細胞をとる子宮体がん検査の場合、痛みを感じる方が多い傾向にあります。
それぞれ生理中に検査することは避けたほうが良いので、受診のタイミングには注意してください。
超音波検査
超音波検査は、経腹法と経腟法があります。
経腹法はお腹から超音波の機械をあて、経腟法は腟内に入れ検査します。経腟法は違和感を感じる程度で痛みはありません。
子宮や卵巣の様子を確認でき、がんや子宮内膜症など様々な疾患の発見に役立ちます。
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排卵出血が起きたときの3つの過ごし方
排卵出血が起きると、痛みやだるさなど身体の症状がみられることがあります。方が多い傾向にあります。ここでは排卵出血が起きた時におすすめの過ごし方として以下の3つを紹介します。
- 体を冷やさない
- 十分に睡眠を取る
- 適度な運動をする
身体の調子が悪いと、気持ちまで落ち込む事が多いのではないでしょうか。身体と心が整うおすすめの過ごし方なので、ぜひお試しください。
体を冷やさない
排卵出血の痛みは生理痛と同様に、身体が冷えることで悪化する場合があるため、温めて血流を良くすることを意識しましょう。
手先や足先を保温するのはもちろん、腹部や腰を温めることが重要です。もし、カイロで温める場合には、低温やけどに注意してください。
飲み物を冷たいものから温かいものにするだけでも身体は温まるので、できるだけ温かい物を選ぶようにしましょう。
お風呂もしっかりと浸かり、身体を温める効果のある入浴剤などもおすすめです。
十分に睡眠を取る
十分な睡眠は、排卵出血による痛みやだるさなどを和らげます。
排卵出血がある時、日中に眠気を感じる方もいますが、お昼寝は30分以内にしましょう。日中に寝る時間を取りすぎてしまうと、夜間に寝つけず睡眠の質が低下してしまいます。
アロマオイルなど香りに関するアイテムは、ラベンダーやネロリなどを選ぶことでリラックス効果が期待できます。排卵出血の時には、睡眠確保ができるよう過ごしましょう。
適度な運動をする
排卵出血で痛みや倦怠感があると、つい横になる時間が長くなりがちです。しかし、休んでいてもなかなか元気にならないことも多いのではないでしょうか。
休養は大切ですが、筋肉を動かさないことで身体がこわばり血流が悪くなってしまいます。体調を整えるためには適度な運動やストレッチで、血流を良くすることも大切です。
激しい運動は控え、ストレッチや軽い体操など、自分が気持ち良いと感じる程度の運動を試してみましょう。
排卵出血に関する4つのよくある質問
排卵出血に関するよくある質問は以下の4つが挙げられます
- 排卵出血があると妊娠しにくいって本当?
- 排卵期出血の後に性行為をしても大丈夫?
- 40代で初めて排卵出血が出ることはある?
- 排卵出血が毎月くる場合はどうすれば良い?
排卵出血は病的な出血ではありませんが、生活する上で不安を感じることも多いはずです。それぞれ解説しているので、ぜひ参考にしてください。
排卵出血があると妊娠しにくいって本当?
排卵出血があるため、妊娠しにくいということはないと考えられます。
排卵出血は正常な生理周期の中で生じる出血であり、病気ではないからです。
ただし、排卵出血以外の不正出血には妊娠へ影響する病気が隠れている可能性があることも事実です。排卵出血は様子を見ても良いですが、他の不正出血の可能性があれば、早めに病院へいきましょう。
排卵期出血の後に性行為をしても大丈夫?
排卵出血後の性行為には問題ありませんが、排卵日前後のため妊娠確率が高くなります。妊娠を希望していない方は、排卵出血後の性行為に注意が必要です。
もし、排卵出血後の性行為で、長期間出血する、多量に出血する、疼痛があるなどの場合は、他の病気が原因の可能性もあるため、すぐに受診してください。
また、血液は細菌が増殖しやすい環境です。そのため、出血がみられている間は、菌の増殖や細菌感染が起こりやすいことが考えられるため性行為を控えていただくことをおすすめいたします。
40代で初めて排卵出血が出ることはある?
40代で初めて排卵出血が出ることはあるかもしれませんが、他の病気が隠れている可能性も否定できません。
特に40代後半となると、閉経へ向けて身体が変化するため、不正出血や生理不順などのトラブルが多くなります。
子宮体がんなども増加するため、排卵出血と決めつけず、受診を優先してください。
排卵出血が毎月くる場合はどうすれば良い?
もし、排卵出血が毎月くるならば、病院受診を推奨します。排卵出血は一時的であればり様子を見ることが多いですが、毎月くることはほとんどありません。
他に生理期間が長い、出血量が多い、痛みがひどいなどの症状がある場合は、他の病気や治療が必要なケースもあります。自分で判断せず、病院受診をおすすめします。
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まとめ
排卵出血があっても過度に心配する必要はありません。
なぜなら、排卵出血は正常な生理周期で起こり得る不正出血のひとつだからです。もし、出血量が多い、長引く、痛みがあるなどの症状があれば病院の受診をおすすめします。
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参考資料
月経周期 - 22. 女性の健康上の問題 - MSDマニュアル家庭版
正常な生理(月経)の目安を教えてください! – 日本産婦人科医会
無月経 - 18. 婦人科および産科 - MSDマニュアル プロフェッショナル版
子宮筋腫 - 22. 女性の健康上の問題 - MSDマニュアル家庭版
子宮頸がん - 22. 女性の健康上の問題 - MSDマニュアル家庭版
子宮内膜症 - 22. 女性の健康上の問題 - MSDマニュアル家庭版
腟炎の概要 - 18. 婦人科および産科 - MSDマニュアル プロフェッショナル版
トリコモナス(Trichomonas)腟炎 - 22. 女性の健康上の問題 - MSDマニュアル家庭版
異常子宮出血(AUB) - 22. 女性の健康上の問題 - MSDマニュアル家庭版
おりもの - 22. 女性の健康上の問題 - MSDマニュアル家庭版