産後に少しずつ生活が落ち着いてきて、低用量ピルの再開を考えている方もいるかもしれません。
この記事では、
「産後に低用量ピルはいつから開始できる?」
「授乳中の服用にリスクはある?」
「赤ちゃんへの影響は?」
など、産後・授乳中の低用量ピルの服用に関する気になる疑問にお答えしていきます。

産後はいつから低用量ピルを再開できる?
ガイドラインによれば、産後は以下の時期を目安に低用量ピルの再開が検討されます。
(参照:「OC・LEPガイドライン 2020年度版」)
【授乳する方】
- 産後6か月以降
【授乳しない方】
- 血栓症のリスク因子がない方:産後21日以降
- 血栓症のリスク因子がある方:産後42日以降
※個別の再開可能時期は医師にご確認ください。
産後の排卵の再開時期には個人差があります。早い方では、授乳していない方で産後25日〜27日、授乳している方で産後73日で排卵が再開したという報告もあります。
排卵の再開後の性交渉には妊娠の可能性があるため、適切な避妊が重要です。
また、血栓症(血管に血の塊が詰まってしまう病気)のリスクは、妊娠から産後では「産後1〜6週間」の時期が最も高く、以降は徐々に低下していくとされています。
こうした背景を踏まえて、産後の低用量ピルの再開時期については、個別の妊娠リスク、低用量ピルを服用することによるメリット、血栓症のリスク因子などをもとに、医師が慎重に判断します。
産後・授乳中の低用量ピルの服用にはなぜ注意が必要?
産後・授乳中の低用量ピルの再開に注意が必要な理由として、ここでは次の2つのリスクについて解説します。
- 血栓症のリスク
- 母乳への影響
血栓症のリスク
血栓症は、血管に血の塊が詰まってしまうことによって起こる病気です。
妊娠中〜産後の女性の体は、血液を固まりやすくする作用が非妊娠時よりも強い状態にあります。
この作用は妊娠の維持や出産時の出血に対する止血に有効な一方で、血栓症のリスクも高めます。(参照:「妊娠と凝固|用語集」日本血栓止血学会)
また、低用量ピルにも血栓症のリスクをわずかに高める可能性があるとされています。
そのため、以下のような血栓症のリスク因子がある方は、低用量ピルの再開時期に慎重な判断が必要とされます。
- 不動
- 分娩時の輸血
- BMI>30
- 産後出血
- 帝王切開の直後
- 妊娠高血圧症候群
- 喫煙
母乳への影響
授乳中に低用量ピルを服用すると、母乳の量が減ったり、質の変化が起こることがあります。
赤ちゃんへの重大または長期的な影響については明らかになっていませんが、授乳中の低用量ピルの服用により、赤ちゃんに黄疸などの症状が起こったとする報告もあります。
そのため、産後6か月未満の授乳婦の方については、ガイドラインでは低用量ピルの服用は禁忌(服用できない)となっています。(参照:「OC・LEPガイドライン 2020年度版」)
産後6か月以降の授乳婦の方については、服用の可否は医師の判断によります。
産後・授乳中の低用量ピル以外の避妊の選択肢は?
ここまで解説してきたように、産後や授乳中の低用量ピルの服用には注意が必要です。
産後・授乳中に検討できる低用量ピル以外の避妊の選択肢としては、次のような方法があります。
ミニピル
ミニピルは、黄体ホルモンのみを含むお薬です。
卵胞ホルモンと黄体ホルモンが含まれる低用量ピルに対して、ミニピルには卵胞ホルモンが含まれていません。そのため、血栓症のリスクが比較的少ないといわれており、血栓症の観点から低用量ピルの服用が難しい方でも服用が可能な場合があります。また、授乳中の方でも比較的早期に使用できる可能性があります。
低用量ピルと同じように、毎日適切に服用することで高い避妊効果があります。
コンドーム
コンドームは、日本でもメジャーな避妊方法のひとつです。
コンドームには性感染症を予防する効果もあるので、性交渉の際は必ず装着するようにしましょう。
サイズに合ったものを正しく使用することが大切です。
子宮内避妊具
子宮内避妊具(IUD / IUS)は、子宮内に小さな器具を入れることで、長期間にわたって避妊効果を得られる方法です。
子宮内避妊具にはIUDとIUSの2種類があります。
- ホルモンを放出しないタイプ(IUD):FD-1など
- ホルモンを放出するタイプ(IUS):ミレーナなど
一般的に、産後は子宮の回復(6週間以上)を待って装着が検討されます。
ホルモンを放出するタイプ(IUS)は、お薬の成分が母乳に移行することが報告されていることから、授乳中の避妊の第一選択とはなりません。
よくある質問
産後はいつから低用量ピルを服用再開できる?
産後の低用量ピルの再開可能時期は、授乳の有無、血栓症のリスク因子によって異なります。
授乳する方は、産後6か月以降に再開が検討されます。
授乳しない方では、血栓症のリスク因子がない方は産後21日以降、リスク因子がある方は産後42日以降に再開が検討されます。
これらはあくまで目安であるため、個別の再開可能時期については、医師にご確認ください。
授乳中の低用量ピルの服用による赤ちゃんへの影響は?
授乳中の低用量ピルの服用は、母乳の量や質の低下に影響する可能性が示唆されています。
赤ちゃんに重大または長期的な影響があるかどうかは明らかになっていません。添付文書では黄疸や乳房腫大が起こったとする報告が記載されていますが、因果関係は明確ではないとされています。
授乳中の低用量ピルの再開時期については、医師にご相談ください。
まとめ
産後の低用量ピルの再開時期は、授乳の有無や血栓症のリスク因子によって異なります。
低用量ピルを再開するかどうかは、避妊の必要性や体調、生活状況を踏まえて慎重に判断することが大切です。
産後・授乳中の避妊方法には、ミニピルやコンドーム、子宮内避妊具など他の避妊方法も選択肢となるため、自己判断せず、医師に相談しながら自分に合った方法を選びましょう。
参考文献・資料
- 「OC・LEPガイドライン 2020年度版」日本産科婦人科学会/日本女性医学学会
- 「産婦人科診療ガイドライン ―婦人科外来編2023」日本産科婦人科学会/日本産婦人科医会
- 「産婦人科診療ガイドライン ー産科編2023」日本産婦人科学会/日本産婦人科医会
- 「妊娠と凝固|用語集」日本血栓止血学会
- 「ミレーナ® 52mg添付文書」2023年6月改訂版第2版,バイエル薬品株式会社

