ピルは月経困難症や子宮内膜症の治療目的で使用される他、生理痛やPMSの改善、避妊目的など、様々なメリットのあるお薬です。
一方で、ピルを服用する際のリスクについて疑問をお持ちの方も多いかもしれません。
この記事では、
「長く飲むと子宮頸がんのリスクが上がるって本当?」
「検診はどれくらいの頻度で必要?」
「ワクチンは大人でも意味があるの?」
など、ピルと子宮頸がんリスクの関係について、医学的な根拠をもとにわかりやすく解説します。

子宮頸がんの原因は?
子宮頸がんのほとんどは、HPV(ヒトパピローマウイルス)の感染が原因とされています。
HPVは性的な接触によって男性にも女性にも感染しうる一般的なウイルスですが、感染したからといって必ずがんを発症するわけではありません。
200種類以上あるHPVのうち一部の種類に発がん性があると考えられています。
一般的にHPVに感染しても、ほとんどの場合は症状が現れることなく、免疫の力で自然にウイルスが体の中から消えていくといわれています。
しかし、一部の方では感染が長期間持続し、がんの前段階である「異形成(いけいせい)」の状態を経て、数年から数十年をかけて子宮頸がんへと進行する場合があります。
低用量ピルの服用によって子宮頸がんのリスクが高まるメカニズム
低用量ピルを長期に服用することで、子宮頸がんの発症リスクがわずかに高まる可能性があります。
ただこれは、ピルが直接子宮頸がんの原因となるわけではありません。
ピルを長期間服用することで、すでに感染したHPVを体の中から消す力が弱まり、持続感染のリスクが高まるためと考えられています。
また、子宮頸がんのリスクはピルの服用が長くなるほど高まり、服用中止後は徐々に減少していくといわれています。
低用量ピルの添付文書でも、1年に1回の定期的な子宮頸がん検診の実施が推奨されています。
子宮頸がんの予防・早期発見には、定期的な検診や適切なワクチン接種がとても重要です。
子宮体がんのリスクはむしろ低下する可能性がある
ここまでご紹介してきたように、低用量ピルを長期に服用すると子宮頸がんのリスクがわずかに高まる可能性があります。
一方で、子宮体がん(子宮内膜がん)については、ピルの服用によってリスクが低下する可能性があることが報告されています。
子宮体がんは、子宮の体部(子宮の奥にある赤ちゃんを育てる部屋の内膜)にできるがんであり、ピルの長期服用によって予防効果が期待できるといわれています。
また、子宮体がんのリスクを低下させる効果は服用中止後も一定期間続くとされており、ピルを使うことで得られる大きなメリットの一つといえます。
子宮体がんの他に、卵巣がん、大腸がんについても、ピルの服用によってリスクが低下することが示されています。
子宮頸がんの予防・早期発見のために
ここでは、子宮頸がんの予防・早期発見の選択肢として、3つの方法をご紹介します。
- HPVワクチンを受ける
- コンドームを使用する
- 定期的な子宮頸がん検診を受ける
HPVワクチンの接種を受ける
子宮頸がんの予防には、HPV感染を予防するワクチンの接種が有効です。
HPVの感染を防ぐワクチンのうち9価ワクチンでは、子宮頸がんの原因の80〜90%を防ぐことができるとされています。
ワクチンには、すでに感染したHPVの種類(型)に対しては効果がないため、優先的に接種が推奨されているのは10歳〜14歳の女性です。次に15歳〜26歳の女性に対しての接種が推奨されています。
ただし、臨床研究では45歳までの年齢層においてもある程度のワクチンの有効性が証明されており、推奨年齢以降の接種であっても、感染していない型の将来のHPV感染を予防できる可能性があるといわれています。
ワクチン接種については、年齢やご自身の状況に応じて医師とよく相談するようにしましょう。
コンドームを使用する
HPVは皮膚や粘膜の広い範囲に存在するため、コンドームだけではHPV感染を完全に防ぐことはできませんが、性交渉時の接触を減らすことで感染リスクを減らせる可能性があります。
一方で多くの性感染症に対しては、コンドームの使用によって予防効果が期待できます。
性感染症予防の観点からコンドームを使用するとともに、HPV感染予防のためにはワクチン接種と定期検診も合わせて活用していきましょう。
定期的な子宮頸がん検診を受ける
子宮頸がんは初期のうちは自覚症状が少ないため、発見が難しいがんでもあります。
20代・30代の若い女性でも発症例はあり、早期発見のためには検診が欠かせません。
ピルを服用しているかどうかに関わらず、20歳を超えたら2年に1回は検診を受けることが推奨されています。
スマルナについて
ピルを飲んでいると「本当にがんのリスクが上がるの?」「自分は飲み続けても大丈夫?」と不安に感じる方も少なくありません。
そうした時に便利なのが、オンライン診療アプリ「スマルナ」です。医師にビデオ通話で相談ができ、自宅にいながら専門的なアドバイスを受けられるのが特徴です。
たとえば「子宮頸がん検診をどのくらいの間隔で受ければよいか」「ピルを長く飲んでも大丈夫か」といった疑問も、医師に聞いて納得した上で服用を続けられます。
特に忙しくて病院に行く時間が取れない方や、初めてピルを使う方には心強いサービスです。

ピルと子宮頸がんリスクに関するよくある質問
最後にピルの服用による子宮頸がんのリスクに関するよくある質問をまとめます。
ピルを服用すると子宮頸がんのリスクは上がりますか?
ピルを長期間服用すると、子宮頸がんのリスクがわずかに上がる可能性があります。
子宮頸がんの主な原因は、性的な接触により感染するHPV(ヒトパピローマウイルス)の感染とされています。
ピルを長期に服用することで持続感染のリスクが高まり、子宮頸がんの発症リスクがわずかに上昇すると考えられています。
なお、ピルの服用中止後リスクは徐々に減少するとされています。
ピルの服用でリスクが上がるがん、下がるがんについて教えてください
ピルの服用により、子宮頸がんや乳がんはわずかにリスクが上がる可能性があるとされています。
一方で卵巣がん・子宮体がん・大腸がんについてはリスクを下げる可能性があることが報告されています。
ピルを検討する際は、リスクとメリットをあわせて理解することが大切です。
まとめ
ピルを長期的に服用すると、子宮頸がんのリスクがわずかに上昇する可能性があります。
その背景にはHPV感染の持続が関わっており、ピルの服用をやめるとリスクは徐々に減少するとされています。
一方で、ピルには子宮体がんや卵巣がんのリスクを下げるといった予防的な側面も期待できます。
大切なのは「ピル=危険」ではなく、「リスクとメリットを正しく理解し、検診やワクチンなどで補う」という視点です。
定期的な子宮頸がん検診を受け、必要に応じてワクチンやコンドームを活用すれば、安心してピルを続けることができます。
参考文献・資料
- 「OC・LEPガイドライン 2020年度版」日本産婦人科学会/日本女性医学学会,2020年
- 「産婦人科診療ガイドライン―婦人科外来編2023」日本産婦人科学会/日本産婦人科医会,2023年,2025年10月閲覧
- 「がん検診」厚生労働省,2025年10月閲覧
- 「ヒトパピローマウイルス感染症~子宮頸がん(子宮けいがん)とHPVワクチン~」厚生労働省,2025年10月閲覧
- 「産科・婦人科の病気 子宮頸がん」公益社団法人日本産婦人科学会,2025年10月閲覧

