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低用量ピルで生理をずらす方法|月経移動に関する知識を徹底解説

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結婚式や旅行、大切な試験やスポーツ大会など、重要なイベントと生理が重なりそうで不安を感じていませんか?

普段低用量ピルを飲んでいない方の月経移動には中用量ピルが使われることが多いですが、低用量ピルでも生理のタイミングをある程度ずらすことが可能な場合があります。

この記事では、低用量ピルを使用した月経移動に関する医学情報、注意すべきリスク、一般的なスケジュールについて詳しく解説します。

中用量ピルを使った月経移動については、こちらの記事で解説しています。

関連:生理日をずらしたい!中用量ピルを使った月経移動の方法

※月経移動は確実な成功を保証するものではありません。

※月経移動は通常の服用方法と異なるので、医師の指示が必要です。個人の体質や健康状態によっては適さない場合もあるため、必ず信頼できる医療機関で医師による診察を受けることが重要です。

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生理をずらす「月経移動」とは

月経移動とは、低用量ピルや中用量ピルを医師の指示に従って適切に服用することで、予定していた生理のタイミングをずらす方法です。

ピルを使った月経移動には、生理を早める方法と遅らせる方法の2種類があります。これらの方法は、特に以下のようなシーンで活用されています。

  • 結婚式や卒業式などの重要なイベント
  • 海外旅行や温泉旅行
  • スポーツの大会や試験
  • 仕事の重要なプレゼンテーション

ただし、ピルを用いた月経移動は、必ず医師への相談が前提となります。また、100%の成功を保証するものではないことも理解しましょう。

ピルで生理をずらせる理由|ホルモンコントロールの仕組み

女性の生理周期は、卵胞ホルモン黄体ホルモンという2つの女性ホルモンによってコントロールされています。

一般的な生理周期では、卵胞ホルモンと黄体ホルモンの分泌量が約28日間の周期で変動することで、生理が起こります。

一般的な生理周期の流れ

一般的な生理周期

卵胞期は、卵胞ホルモンが増加して子宮の内膜を厚くさせる期間で、黄体期は黄体ホルモンが高い状態で維持される期間です。

生理が始まる仕組みは、ホルモン量が急激に低下することで分厚くなった子宮内膜の維持ができなくなり、内膜がはがれ落ちることにあります。

低用量ピルにもこの2つのホルモンの成分が含まれていて、ホルモンの働きを一時的にコントロールすることで、生理が来るタイミングを調整できると考えられています。

ただし個人の体質やホルモンバランス、服用タイミングなどにより、100%の成功は保証できません。

そのため、重要なイベントがある場合は、余裕をもったスケジュールで医師に相談することが大切です。

低用量ピルで生理をずらす方法

月経移動は通常とは異なる服用方法のため、必ず医師の指示が必要となります。

また、実際の服用方法や服用のスケジュールは個人の状況によっても異なるため、詳しくは診察時に医師までご相談ください。

ここでは、一例として生理を早める場合、遅らせる場合の低用量ピルの服用方法についてご紹介します。(参考:産婦人科診療ガイドライン-婦人科外来編2023)

※スケジュールはあくまで例です。実際の服用方法は医師の指示に従ってください。

【生理を早める場合】

  • 早めたい生理のひとつ前の生理開始3~5日目から服用を開始
  • 10日以上内服し、生理開始希望日の2日前に服用を中断する

【生理を遅らせる場合】

  • 遅らせたい生理のひとつ前の生理開始から生理7日目以内に服用を開始
  • 生理開始を希望する2日前まで実薬を連続で服用する

※実薬:1~21錠目までの有効成分を含む錠剤

低用量ピルを使って生理を遅らせることは難しいと判断される場合があるため、一般的には中用量ピルを使用することが多いようです。

ただ、ご相談の時期や希望の日程、医師の判断によっては低用量ピルを使用する場合もあります。

以下の点にもご留意ください。

  • 服用方法については必ず医師の指示を受けましょう
  • 服用開始が遅れると希望日に間に合わない場合があります
  • 確実に生理日をずらせるわけではありません

低用量ピルによる月経移動のポイント

月経移動では、余裕を持ったスケジュールや体調管理が重要です。

ここでは、低用量ピルによる月経移動に関するポイントを2つ解説します。

生理周期を把握しておく

生理を移動させるときは、自分の生理周期を正しく把握しておくことが大切です。

ピルは自身のホルモンバランスを調整して月経移動を行うため、生理周期の把握を誤ったり、生理周期を把握していなかったりすると生理をずらすことが難しくなることがあるかもしれません。

旅行やイベントなどのスケジュールを明確にし、余裕をもって医師に相談を行いましょう。

また、服薬方法やスケジュールについては必ず医師の指示に従ってください。

月経移動が失敗する要因を排除する

ピルの効果を下げてしまう要因(飲み忘れ、服用後3時間以内の嘔吐・下痢、一部のお薬との飲み合わせなど)があると、予定通りに生理をずらせないことがあります。

服薬の継続性や相互作用には十分注意しましょう。

安全に月経移動を行うには、こうしたリスク要因をあらかじめ避けることが重要です。

安全に生理をずらすために知っておくべきリスク

低用量ピルによる月経移動は比較的安全な方法ですが、他のお薬と同様に副作用のリスクが存在します。

安全に月経移動を行うために、起こりうる副作用とその対処法、特に注意すべき症状について理解しておくことが重要です。

服用初期に起こりやすい副作用

低用量ピルの服用開始時期には、体内のホルモンバランスの変化によって、不正出血吐き気といった副作用が現れることがあります。

症状が強い場合や心配な症状がある場合は、我慢せずに医師に相談することが重要です。

関連:低用量ピルの効果と副作用|避妊・生理痛・PMSへの影響を詳しく解説

血栓症の症状と受診のタイミング

低用量ピルの服用で最も注意すべき重篤な副作用は、血管内に血の塊ができる「血栓症」です。

低用量ピルによる血栓症リスクの増加はごくわずかですが、早期に対応するためにも、血栓症が疑われる初期症状についてあらかじめ知っておくと安心です。

以下の症状が現れた場合は、直ちに服用を中止し、速やかに医療機関を受診してください。

【注意すべき血栓症の症状(ACHES)】

症状

具体的な内容

A(Abdominal pain)

激しい腹痛

C(Chest pain)

激しい胸痛、息苦しさ、押しつぶされるような痛み

H(Headache)

激しい頭痛

E(Eye/Speech problems)

見えにくい部分がある、視野が狭くなる、舌のもつれ、失神、けいれん、意識障害

S(Severe leg pain)

ふくらはぎの痛み・むくみ、ふくらはぎを握ると痛い、赤くなっている

これらの症状は、血栓症の可能性を示す重要なサインです。

症状が軽い場合でも、複数の症状が同時に現れる場合や症状が続いたり悪化したりする場合は、すぐに医療機関を受診してください。

万が一血栓症を発症しても、適切な治療を行うことでおよそ99%の方は命に関わることはないとされています。

関連:ピルの重大な副作用「血栓症」とは?リスクや症状について解説します

ピルを処方するのが難しい・慎重投与となる場合の例

低用量ピルは多くの女性にとって安全に使用できるお薬ですが、健康状態によっては処方が困難な場合があります。

以下は、低用量ピルの服用ができない(服用禁忌)の方と医師の管理のもとで慎重な投与が必要と判断される場合の一例です。

【禁忌等:お薬の服用ができない】

  • お薬の成分に過敏症の既往歴がある
  • 血栓症の既往歴があったり現在罹患している
  • 35歳以上で1日15本以上喫煙する
  • 妊娠中または妊娠の可能性がある
  • 前兆のある片頭痛がある(せんき暗点、星型せん光など)
  • 高血圧の方(禁忌に該当しないがスマルナでは処方不可)
  • 糖尿病の方(禁忌に該当しないがスマルナでは処方不可)

【慎重投与:医師の管理のもとで慎重な投与が必要】

  • BMI30以上の肥満
  • 家族に血栓症の既往歴がある
    など

問診では、必ず正確な病歴と現在の健康状態を申告してください。 

最終的な服用可否については、医師によって個々の健康状態やリスクの程度などを考慮して判断されます。

よくある質問

ピルで生理を確実にずらすことはできる?

100%の成功は保証されていません。

月経移動は多くの女性に効果的な方法ですが、以下の要因により成功率に個人差があります。

【成功率に影響する要因】

  • 体質や健康状態、普段の生理周期
  • 希望する月経移動の日程
  • 相互作用のあるお薬の使用

重要なイベントなどで生理をずらしたい予定がある場合は、余裕をもったスケジュールで医師に相談し、万が一の場合の対処法についても準備しておくことが重要です。

中用量ピルでも生理をずらすことはできる?

普段低用量ピルを服用されていない方で一時的に生理をずらしたい場合は、中用量ピルが使用されることが多いです。

普段低用量ピルを服用していない方でも、医師の判断によっては低用量ピルでの月経移動が可能ですが、中用量ピルに比べると失敗する可能性が高くなります。

中用量ピルは低用量ピルに比べてホルモン量がやや多いため、吐き気や頭痛などの副作用が生じる可能性もあります。

月経移動に使うピルの種類は、体質や健康状態、希望する時期などを考慮し、医師が総合的に判断します。

計画的に生理日を調整するためには、余裕をもって1か月前には医師に相談するようにしましょう。

既に低用量ピル服用中の場合で生理をずらすには?

低用量ピルを継続して服用している方の場合、服用中のピルを使用しての月経移動が可能とされています。

移動したい生理日の約1か月前くらいを目安に、低用量ピルを処方した医師に服用方法を相談しましょう。

なお、自己判断で月経移動をすると、失敗したり、失敗した際の対処法がわからなかったりなどのトラブルが起こる場合があるので、服用法は必ず医師の指示に従いましょう。

月経移動のための低用量ピルの料金相場は?

月経移動を目的としたピル処方は基本的に自費診療となるため、医療機関ごとに料金が異なります。

お薬の種類やお薬を取り扱う医療機関にもよりますが、低用量ピル1シートあたりの料金は2,000円〜3,000円台が一般的な相場です。

スマルナの低用量ピルの料金についてはこちら

月経移動の相談・処方が可能な医療機関は?

月経移動の相談・処方が可能な医療機関は、主に産婦人科や婦人科などです。

対面診察だけでなくオンラインでの診察が可能なクリニックもあります。

【対面診察とオンライン診察の違い】

診療形態

特徴

対面診療

・産婦人科、婦人科、内科(ピル処方対応)で受診可能
・専門性が高く、豊富な経験を持つ医師による診察
・女性医師在籍の場合も多く、相談しやすい環境
・月経移動の実績が多い
・内科の場合は事前に月経移動対応可否の確認が必要

オンライン診療

・一部の医療機関ではオンライン相談・処方に対応
・初回は対面診察が必要な場合もある
・お薬は郵送で受け取り可能
・事前に月経移動対応可否の確認が必要

受診前に、月経移動の対応可否と費用について電話で確認することをおすすめします。

また、スマルナでも月経移動やピルに関する相談がオンラインで可能です。自宅にいながら医師に相談でき、お薬の配送にも対応しているため、忙しい方でも利用しやすい環境が整っています。

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まとめ

月経移動のための低用量ピルの服用方法は、体質や健康状態、希望する時期など個人の状況に応じて医師が判断しているため、指示される服用法が異なる場合があります。

そのため、自己判断での服用スケジュールの変更はせず、必ず医師の指示に従って服用するようにしましょう。

なお、ピルの服用は副作用のリスクを理解することが重要です。特に血栓症の症状(ACHES)には十分注意してください。

参考文献・資料

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